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【ソムメモ】品種探求シリーズ#21『シラー その3(後編)』楽しみ方とおすすめワイン【ソムリエ解説】

【ソムメモ】品種探求シリーズ#21『シラー その3(後編)』楽しみ方とおすすめワイン【ソムリエ解説】

最終更新日: 2025年1月30日

ようこそ、品種探求シリーズへ!

今回のテーマは、シラーを最大限に楽しむ方法です。力強い果実味とスパイシーな香りが特徴のシラーは、ワイン愛好家にとって欠かせない品種のひとつ。産地や造り手によってその表情が大きく異なるのも魅力です。本記事では、そんなシラーをより美味しく味わうためのポイントを解説します。

まず、サーブ温度やグラス選び、デキャンタージュの有無といった基本的な楽しみ方から、ペアリングのコツまでを紹介。さらに、シラーと相性抜群の料理や、意外と合わない料理の楽しみ方も解説します。そして最後には、筆者おすすめのシラーを5本厳選し、それぞれの特徴や魅力をお届けします。

シラーは初心者にも楽しみやすく、奥深い世界を探求する上級者にとっても興味が尽きない品種です。本記事を通じて、シラーの魅力を存分に味わっていただければ幸いです。

内容概要

§1. シラーを美味しく楽しむための基本

・適切なサーブ温度:ワインのバランスを最大限に引き出す
・グラスの選び方:香りと味わいを最大限に引き出す
・デキャンタージュの有無:若いシラー vs 熟成シラー

§2. シラーと料理のペアリング

・シラーの味わいと料理の相性の基本
・おすすめの料理例(グリル肉、スパイス料理、熟成チーズなど)
・避けたい料理と、その代替案

§3. おすすめのシラー ❺選

・E. ギガル・エルミタージュ ルージュ
(フランス・ローヌ地方)

・ドメーヌ ポール ジャブレ エネ・エルミタージュ ラ メゾン ブルー
(フランス・ローヌ地方)

・ペンフォールズ・RWT ビン 798 シラーズ
(オーストラリア・バロッサ ヴァレー)

・ポルセレインベルグ ・シラー
(南アフリカ・スワートランド)

・アルコウアス・ルー
(チリ・エルキ ヴァレー)

§4. まとめ

§1. シラーを美味しく楽しむための基本

シラーを最大限に楽しむためには、適切な温度管理、グラスの選び方、デキャンタージュの有無などが重要です。ワインは環境やサーブ方法によって香りや味わいが大きく変わります。シラーの持つ豊かなスパイス感や果実味、力強いボディを引き出すための基本を押さえておきましょう。


適切なサーブ温度:ワインのバランスを最大限に引き出す

ワインは温度によってその印象が大きく変わります。シラーの場合、ボディ感や熟成度に応じて適切な温度を設定することが重要です。

✔ フルボディのシラー(オーストラリア・バロッサ、北ローヌなど)

推奨温度:16〜18℃

理由:この温度帯では、ブラックベリーやブラックチェリーなどの果実のアロマと、ブラックペッパーやスモークなどのスパイス感が調和し、タンニンの滑らかさも際立ちます。

✔ 軽やかなシラー(南仏、冷涼産地のシラー)

推奨温度:14〜16℃

理由:やや冷やすことで、果実のフレッシュさが際立ち、酸味とタンニンのバランスが取れ、飲みやすい印象になります。

✔ 熟成したシラー(エルミタージュ、コート・ロティなど)

推奨温度:16〜18℃

理由:熟成したシラーは、スモーキーな香りや革、土っぽさなどの複雑なニュアンスが現れるため、高すぎない温度でじっくりと楽しむのが理想的です。

▶ 温度管理のポイント

冷やしすぎるとタンニンが強く感じられ、渋みが際立つ

温度が高すぎるとアルコールのボリュームが前面に出て、バランスを損なう

冷蔵庫で15〜20分冷やす、もしくは室温で20分ほど戻すことで調整


グラスの選び方:香りと味わいを最大限に引き出す

シラーの個性を引き立てるには、適切なグラス選びが不可欠です。シラーの特徴であるスパイス感、熟した果実味、豊かなボディを最大限に感じられる形状のグラスを選びましょう。

✔ シラー向けのグラスのポイント

ボウル部分が広く、口径がやや狭いものが理想的(香りを集め、フルボディのワインに適した形状)

リムの狭い形状:果実の甘みや酸味を程よくまとめ、スムーズな飲み口を実現

ステム(脚)が長いもの:温度変化を抑える

✔ おすすめのグラス

【リーデル・ヴィノム シラー/シラーズグラス】

シラー専用に設計されたグラスで、スパイス感と果実の甘みをよりバランスよく楽しめる

ボウルが大きく、空気との接触面積が広いため、アロマが最大限に引き出される


【ザルト・ユニバーサルグラス】

軽量で極薄のグラスにより、口当たりが繊細になり、ワインの風味をより純粋に感じられる

シラー以外にもピノ・ノワールやネッビオーロなどのエレガントな赤ワインにも適用可能



デキャンタージュの有無:若いシラー vs 熟成シラー

シラーは、熟成による変化が大きい品種です。そのため、ワインの状態に応じてデキャンタージュ(デカンタに移し替えて空気に触れさせる)を行うことで、よりスムーズな飲み口になります。

✔ 若いシラー(5年以内)

デキャンタージュ推奨時間:30分〜1時間

理由:シラーの特徴である濃厚な果実味とスパイス感を和らげ、酸とタンニンのバランスを整える

✔ 熟成したシラー(10年以上)

デキャンタージュは慎重に

理由:熟成シラーは繊細な香りが多いため、デキャンタージュしすぎると風味が飛んでしまう可能性がある。軽く移し替える程度がベスト

✔ デキャンタージュのポイント

クリスタルのデキャンタを使用し、空気との接触面積を調整

目の細かいフィルターを使い、熟成ワインの澱(おり)を取り除く


ワインは飲む環境や方法によって大きく印象が変わります。適切なサーブ方法を知ることで、シラーの魅力をより深く楽しむことができるでしょう。

§2. シラーと料理のペアリング

シラーは、その豊かな果実味とスパイシーなニュアンス、しっかりとしたタンニンが特徴的な赤ワインです。この独特の個性を活かすためには、料理との相性をしっかり考えることが重要です。ペアリングの基本を押さえ、シラーと楽しめる料理のバリエーションを広げていきましょう。


シラーの味わいと料理の相性の基本

シラーは、産地によって異なるスタイルを持つ品種ですが、共通して以下の特徴があります。

果実味が豊か:ブラックベリー、ブルーベリー、プラムのような熟した果実の風味
スパイシーなニュアンス:ブラックペッパー、クローブ、リコリス(甘草)などのスパイス香
しっかりしたタンニン:赤身の肉やしっかりした味付けの料理と相性が良い
酸味のバランスが取れている:料理との幅広いマッチングが可能

ペアリングの基本原則

シラーのスパイス感に合う料理を選ぶ(胡椒やクミン、スモークの風味がある料理)

果実味の甘さが料理の塩味や旨味を引き立てる

タンニンの強さには脂肪分のある料理がベスト(赤身肉やソースの濃厚な料理)

熟成シラーはより繊細な料理と合わせると、バランスが取れる


おすすめの料理例

シラーの持つ力強い味わいとスパイシーな風味を活かせる料理を、いくつか紹介します。

✔ グリル肉(赤身肉・ジビエ)

おすすめ料理
牛ステーキ(ブラックペッパーやガーリックを効かせたもの)
ラムチョップ(ローズマリーとニンニクの香りを添えて)
イノシシや鹿肉のロースト(野性味のある味わいがシラーと好相性)

ペアリングのポイント
シラーのタンニンは脂肪分と結びつくことで柔らかく感じられます。肉の脂の旨味と果実味のバランスが絶妙に絡み合い、食べ応えのあるペアリングになります。


✔ スパイス料理(中東・北アフリカ・インド料理)

おすすめ料理

スパイスを効かせたラムのタジン(クミン、シナモン、クローブなど)
スパイシーチキンのグリル(パプリカやチリを効かせたもの)
ビーフカレー(クローブ、カルダモンが香る本格派)

ペアリングのポイント
シラーに備わるスパイスの要素(ブラックペッパー、リコリス)と料理のスパイス感が相乗効果を生み出し、より深みのある味わいを楽しめます。


✔ 熟成チーズ(コクのあるチーズ)

おすすめのチーズ

エポワス(ウォッシュタイプのフランス産チーズ)
コンテ(18ヶ月以上熟成)
ゴルゴンゾーラ・ピカンテ

ペアリングのポイント
果実味の豊かなシラーは、塩味と熟成の旨味が強いチーズと非常に相性が良いです。特に、スパイシーなシラーはブルーチーズと合わせることで、甘味と塩味の絶妙なバランスを楽しめます。


避けたい料理と、その代替案

シラーは非常に万能なワインですが、一部の料理とは相性が難しい場合があります。ここでは、避けたい料理と、それでもシラーと楽しめるような工夫を表にまとめておりますので、料理の際の参考にしていただければと思います。

避けたい料理理由シラーと合わせる場合の工夫
激辛料理(四川料理、タイ料理)スパイシーさがワインのタンニンを強調し、苦味を感じやすいチリの量を抑え、スパイスのバランスを調整する(例:クミンやナツメグを増やす)
生牡蠣・白身魚の刺身タンニンが魚介のミネラル感と合わず、生臭さが強調されるソテーやグリルにして旨味を引き出す(例:バター焼き、ハーブグリル)
甘いデザート(チョコレートケーキなど)ワインの酸味がデザートの甘さとぶつかり、不快な味わいになるダークチョコレート70%以上のビターなものを選ぶ(果実味の甘さとバランスが取れる)
強い酸味の料理(レモンたっぷりのサラダなど)ワインの果実味と酸味のバランスが崩れる酸味の強い要素を減らし、ナッツやチーズを加えることで調整(例:ナッツとパルミジャーノのサラダ)

肉料理:赤身肉のステーキやラム、ジビエがシラーの力強い果実味とタンニンと好相性
スパイス料理:シラーのスパイシーなニュアンスを活かす、中東・北アフリカ・インド系の料理とよく合う
熟成チーズ:塩気と旨味の強い熟成チーズ(ウォッシュ系、ブルーチーズ)がベストマッチ
避けたい料理には工夫を:酸味の強すぎるものや生魚系の料理は火を通す、スパイスの調整をするなどで調整可能

シラーはその力強さから、さまざまな料理と合わせやすい万能な品種です。次のセクションでは、シラーのおすすめワインを厳選して紹介していきます。

§3. おすすめのシラー ❺選

シラーは、世界中のさまざまな産地で素晴らしいワインを生み出している品種です。今回は、フランスのローヌ地方からオーストラリア、南アフリカ、チリまで、シラーの多様な表情を楽しめる5本を厳選しました。それぞれの産地の特徴や生産者のこだわり、ワインの魅力を詳しく紹介します。


E. ギガル・エルミタージュ ルージュ
(フランス・ローヌ地方)

エティエンヌ・ギガルが創設した E. ギガル(E. Guigal) は、ローヌ地方を代表する生産者の一つ。特にコート・ロティやエルミタージュなどの北ローヌのアペラシオンで世界的に高い評価を受けています。ギガルのエルミタージュ・ルージュは、エルミタージュの丘の厳選された区画から造られるシラー100%のワインで、その凝縮感と長期熟成のポテンシャルが特徴です。

ワインの特徴

✔️ 力強いボディと骨格のあるタンニン
✔️ ブラックベリー、スミレ、スモーク、ペッパーの複雑な香り
✔️ 熟成によるトリュフやレザーの風味の進化

このワインは10年以上の熟成に耐えうる構造を持ち、時間とともにさらに深みを増します。


ドメーヌ ポール ジャブレ エネ・エルミタージュ ラ メゾン ブルー
(フランス・ローヌ地方)

1834年創業の ポール・ジャブレ・エネ(Paul Jaboulet Aîné) は、ローヌ地方の名門ワイナリーで、「ラ シャペル」というアイコン的なワインで知られています。「ラ メゾン ブルー」は、エルミタージュのテロワールをより親しみやすく表現したワインで、エレガンスと力強さを兼ね備えています。

ワインの特徴

✔️ 熟したブラックフルーツの豊かなアロマ
✔️ ブラックペッパーやスモーキーなニュアンスがアクセント
✔️ シルキーなタンニンと長い余韻

エルミタージュのエッセンスを堪能できる一本で、熟成のポテンシャルも高いワインです。


ペンフォールズ・RWT ビン 798 シラーズ
(オーストラリア・バロッサ ヴァレー)

オーストラリアを代表するワインブランド ペンフォールズ(Penfolds) は、「グランジ」などのプレミアムワインで世界的に知られています。RWT(Red Winemaking Trial)シリーズは、バロッサ・ヴァレーのシラーズの特徴を表現したエレガントなスタイルのワインです。

ワインの特徴

✔️ バロッサらしい豊潤な果実味とオークのニュアンス
✔️ ダークチョコレート、ブラックチェリー、バニラのアロマ
✔️ シルキーで長い余韻、洗練されたフィニッシュ

オーストラリアン・シラーズの魅力を存分に楽しめる一本で、飲みごたえとバランスの良さが際立っています。


ポルセレインベルグ ・シラー
(南アフリカ・スワートランド)

スワートランド は、南アフリカで最も注目されるワイン産地の一つで、シラーの品質の高さでも知られています。ポルセレインベルグは、ブティックワイナリーながらも、徹底した手作業による醸造と伝統的な醸造手法を駆使し、ユニークでテロワールを感じさせるワインを生み出しています。

ワインの特徴

✔️ スパイスとミネラルが際立つ洗練されたスタイル
✔️ 野生のハーブ、ブラックオリーブ、ブラックベリーの複雑な香り
✔️ ストラクチャーがありながらもフレッシュな酸味

南アフリカならではのシラーの魅力を感じられる一本で、食事とのペアリングにも優れています。


アルコウアス・ルー
(チリ・エルキ ヴァレー)

エルキ・ヴァレー は、チリの最北部に位置し、標高が高く冷涼な気候が特徴です。ここで造られるシラーは、南フランスのスタイルに近く、エレガントでスパイシーな風味が際立ちます。アルコウアスは、この地のシラーのポテンシャルを最大限に引き出すワイナリーとして高く評価されています。

ワインの特徴

✔️ 冷涼産地ならではのフレッシュな酸とシルキーなタンニン
✔️ ブラックチェリー、プラム、スモークのエレガントなアロマ
✔️ ミネラル感とスパイスが調和した長い余韻

チリ産シラーの新たな魅力を発見できる一本で、エレガントなスタイルが特徴です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

アルコウアス・ルー[2018]
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§4. まとめ

品種探求シリーズとして取り上げたシラーは、力強さとエレガンスを兼ね備えた、奥深い魅力を持つブドウ品種でした。前編では、シラーの基本的な特徴や歴史、シラーとシラーズの違いを解説し、品種の多様なスタイルを紹介しました。中編では、世界の主要産地ごとのシラーの個性や栽培・醸造の技術について詳しく掘り下げ、産地ごとに異なるシラーの表情をお伝えしました。そして後編では、シラーをより美味しく楽しむためのサーブ温度やグラスの選び方、料理とのペアリング、おすすめのワインを紹介しました。

このシリーズを通じて、シラーが持つスパイシーな風味、深い果実味、そして産地ごとの違いがどのようにワインの個性を形成するのかを感じていただけたのではないでしょうか。シラーは産地や醸造方法によって幅広い表情を見せる品種であり、カジュアルな食事から特別なディナーまで、さまざまなシーンで楽しめるワインです。

これからも、品種探求シリーズを通じて、ワインの奥深さと楽しみ方をお届けしていきます。次回もどうぞお楽しみに!

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